第3回リスクアセスメントの背景

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2026年9月29日更新
株式会社東和コーポレーション

これまでのニュースレターでは、リスクアセスメントの基本的な考え方と実施手順についてご紹介してきました。では、なぜ今リスクアセスメントがこれほどまでに重要視されているのでしょうか。その背景には、労働災害の現状と安全衛生に関する制度の変化があります。

厚生労働省が公表した労働災害発生状況について、令和3年から令和7年までの5年間の推移を見てみると、労働災害による死亡者数(新型コロナ罹患分を除く)は減少しているものの、休業4日以上の死傷者数は令和5年以降はずっと135,000人台となっており、高い数値が続いています。

このことから従来の画一的な安全対策だけでは、現場ごとの異なる危険や作業環境の変化に十分に対応できなくなっていることがうかがえます。

共通の出発点——2006年、全業種が同じスタートラインに立った

こうした状況を受け中央労働災害防止協会は、「従来の事後対応型の安全対策には限界があったこと」「技術の進展により機械設備や化学物質等が用いられ、危険性・有害性も多様化してきたこと」をリスクアセスメントが必要になった背景として挙げています。こうした背景から2006年4月1日、労働安全衛生法第28条の2により、リスクアセスメントの実施が全業種・全分野で努力義務化されました。これにより、すべての業種がリスクを事前に把握・評価し、低減するという共通の考え方のもとで安全管理に取り組むこととなりました。 しかしその後の制度の歩みは分野によって異なります。

分野別の現状——化学物質だけが義務化へ進んだ

化学物質の分野では、2014年6月に成立した労働安全衛生法の改正に基づき、2016年6月1日からSDS交付義務対象物質(施行時640物質)を取り扱うすべての事業者に対して、リスクアセスメントの実施が義務化されました。さらに2022年5月の省令改正により、2024年4月1日からリスクアセスメント対象物質の製造・取扱事業場等において、化学物質管理者の選任が義務化され、自律的な化学物質管理が一層推進されています。 一方、機械・建設業など他分野では2006年の努力義務化から大きな制度変更はなく、現在もリスクアセスメントは努力義務にとどまっています。

このように、同じ2006年を出発点としながらも、分野によって制度の進展に違いが生じています。では、なぜ化学物質分野のみが制度改正が進んだのでしょうか。

なぜ化学物質だけ義務化が進んだのか——自律的管理への転換

化学物質の義務化が進んだ背景には、取扱われる化学物質の多様化があります。従来、リスクアセスメントが義務付けられていたのは特別規則※の対象物質のみで、それ以外は努力義務にとどまっていました。 しかし化学物質による労働災害の約8割が規制対象外の物質によるものであることが判明したことで、国が個別に物質を指定する従来の方式では限界があるとして、事業者がリスクアセスメントに基づき自らばく露低減措置を選択・実施する「自律的管理」へと転換されました。この転換により、各事業者の実態に合った柔軟な管理が可能となります。 化学物質の分野では、現在も対象物質が順次拡大されており、自律的管理の強化が続いています。 ※特別規則:特定化学物質障害予防規則、有機溶剤中毒予防規則、鉛中毒予防規則、四アルキル鉛中毒予防規則

画一的な対策だけでは現場のリスクに対応しきれない今、何から始めるべきか——次号では、正しい保護具選びについて解説します。

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